大腸がんは大腸に発生するがんで、がんができる場所によって大きく結腸がんと直腸がんに分けられます。2020年に新たに大腸がんと診断された人は、14万7725人。1990年には約6万人だったため、30年間で2・5倍近く増加しています。赤身肉や加工肉の摂取など食生活の欧米化や人口の高齢化が増加の原因だと考えられています。大腸がんにかかる人の割合は、40代から増え始め、高齢になるほど高くなっていきます。大腸がんは、進行すると便に血が混じる、便の表面に血が付着する、腸が狭くなることによる便秘や下痢、便が細くなる、便が残る感じがする、おなかが張るといった症状が出やすくなりますが、初期にはほかの多くのがんと同様に、症状がありません。しかし、大腸がんは、早期発見の意義が非常に大きいがんです。なぜなら早期のステージⅠで治療できれば、5年生存率は99%近くで、ほぼ治るといえるからです(全国がんセンター協議会加盟施設の生存率共同調査)。さらに早期であれば、おなかを切らずに肛門から器具を挿入してがんを切除する内視鏡治療で治る可能性が高くなります。そこで無症状の大腸がんを発見するために、大腸がん検診をはじめとしたさまざまな検査方法があります。日本では1992年から、便潜血検査免疫法(便潜血検査)による大腸がん検診が公的に実施されています。対象となるのは40歳以上で、検診の間隔は1年に1回、ほとんどの市区町村が検診の費用を負担し、一部の自己負担で受けることができます。便潜血検査は、便の中に混じった血液を調べる検査で、肉眼では見えないような少量の出血も確認できます。2日間の便を調べるのが一般的ですが、1日でも陽性となると精密検査を受けることが推奨されています。「要精密検査」となった場合に、通常実施されるのが大腸内視鏡検査です。下剤で大腸内を空にしたうえで、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内側をモニターに映し出して調べる検査です。腫瘍が見つかったら、組織の一部を採取し、病理検査を実施して最終的に良性か悪性かを診断します。ほかの検査としては、肛門から直腸に指を入れて、がんがあるかどうかを調べる直腸指診があります。便潜血検査や内視鏡検査で見逃されるような直腸がんが見つかることもあります。こうした検査の流れによって、無症状の大腸がんを発見できるわけですが、検診受診率と精密検査受診率は低く、大腸がん死亡率の減少は十分ではありません。また、ごく早期のがんを見つけるには便潜血検査だけではむずかしいという指摘もあり、大腸内視鏡検査の有効性が検討されてきました。そして、国立がん研究センターが、2024年11月に19年ぶりに「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」を改定し、2024年度版を公開しました。それによると、便潜血検査での検診を推奨グレードA(推奨)、大腸内視鏡検査を推奨グレードC(市区町村が実施する住民を対象とした対策型検診としては実施を推奨しな現在使われている便潜血検査の感度が大幅に向上早期には自覚症状がない肉眼では見えない出血を確認できる便潜血検査2025.04 – LABO ■1230年間で2・5倍増加で10人に1人、女性で12人に1人と推定されています。早期発見、早期治療できれば比較的治りやすいがんですが、そのために必要なのが検診です。近年は内視鏡検査での検診を受ける人が増えていますが、国立がん研究センターが大腸がんの検診ガイドラインを19年ぶりに改定し、「便潜血検査」を「推奨」としました。その根拠や新たな指針について紹介します。日本人がかかるがんのうち、最も多いのが大腸がんです。生涯で大腸がんにかかる人は男性Medical Trendメディカル・トレンド19年ぶりに指針改定「大腸がんの検診ガイドライン」
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