Labo_No.554
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  ※ゲノムワイド関連解析約262万人を対象とした大規模な研究結果に期待要因の重要性が判明しています。痛風の発症には肥満や飲酒よりも遺伝子変異のほうが強く影響するのではないかということも示唆されています。痛風の遺伝要因には次のような種類があるといわれています。①遺伝性代謝性疾患(単一遺伝子疾患)  尿酸の合成を亢進する遺伝性疾患、あるいは尿酸の排泄を低下させる遺伝性疾患で単一遺伝子の異常にともなう先天的な疾患が原因となります。多くが青年期までに発症し、頻度はまれです。②多因性遺伝性疾患としての痛風家族内に高尿酸血症の傾向がみられ、多数の遺伝子が関連します。代表的な研究報告としては、2009年に日本の複数の大学からなる研究グループが、尿酸トランスポーター遺伝子ABCG2が痛風の主要な病因遺伝子であることを発見しました。ABCG2遺伝子の変異が、尿酸の排泄機能を低下させることがわかっています。ABCG2遺伝子の変異による機能低下は、日本人の痛風患者の約8割にみられることが判明しています。さらに痛風の発症リスクが26倍も高まる変異パターンを痛風患者の1割が持っていることも判明しました。③関節炎発症に関する遺伝子高尿酸血症から痛風への進行に関連する要因として遺伝子の関連が指摘されています。世界的な研究としては、2024年、日本の防衛医科大学校など18カ国による研究チームが、世界の約262万人の遺伝子を解析し、痛風の起こりやすさと関連する遺伝子が、377か所あることを特定しています。科学誌『ネイチャー・ジェネティクス』に発表されたこの研究では、ヨーロッパ系、東アジア系、ラテン系、アフリカ系という4つの人種集団について、痛風の人と痛風ではない人の遺伝子をゲノムワイド関連解析※しました。その結果、痛風と関連のある遺伝子領域が377か所あり、その中には従来知られていた尿酸の輸送に関わる領域などのほかに、新たに炎症の起こりやすさに関連する領域も突き止めました。痛風は前述したとおり、①高尿酸血症が続くことが原因で関節内に尿酸の結晶がたまり、②尿酸の結晶に免疫細胞が反応する、という2段階を経て発症します。この研究では、①だけではなく②に関連する遺伝子領域を新たに発見したというわけです。この研究は大規模で多様な集団を対象とした研究結果であることも注目されています。今後、遺伝子の個人差に応じて、痛風の人を効率的かつ早期に発見すること、それをふまえた予防、新薬の開発などが期待できるのです。遺伝子の個人差である一塩基多型をヒトゲノム全体にわたって、100万か所ほど調べ、患者群と健常者群の間で頻度に差があるかどうかを見ることで、疾患に関わる遺伝子を見出す研究手法。(100gあたり)鶏レバー、干物(マイワシ)、白子、アンコウ、健康食品(DNA/RNA、ビール酵母、クロレラ、スピルリナ、ローヤルゼリー)など豚・牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、干物(マアジ、サンマ)など肉類(豚、牛、鶏)の多くの部位、魚類など肉類(豚、牛、羊)の一部、魚類の一部、加工肉類など、ホウレンソウ、カリフラワー野菜類全般、米などの穀類、鶏卵、乳製品、豆類、きのこ類、豆腐、魚肉加工食品(ちくわ、かまぼこ、さつま揚げ)など13■ LABO – 2025.03■食品中のプリン体含有量極めて多い(300mg~)多い(200~300mg)中程度(100~200mg)少ない(50~100mg)極めて少ない(~50mg)★参考文献  日本生活習慣病予防協会ホームページ、公益財団法人痛風・尿酸財団ホームページ、「高尿酸血症・痛風のガイドライン第3版」(一般社団法人日本痛風・尿酸核酸 学会)、防衛医科大学校プレスリリース「377か所の痛風遺伝子座の同定に成功」、東京大学プレスリリース「痛風遺伝子の発見」Medical Trendメディカル・トレンド

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