Labo_No.554
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ある日突然、足の親指などの関節が腫れて、激痛に襲われる痛風。病名のとおり「風が吹いただけでも痛い」と言われ、歩くのが困難になったり、日常生活に支障が出たりする人もいます。症状は発作的に起こることから「痛風発作」と呼ばれ、強い痛みが数日間続いたあと、1~2週間で症状はおさまっていきます。なかには発作を起こす前兆として、患部の違和感やむずむず感がある人もいます。最初の痛風発作は足の親指の付け根に出現することが多いですが、足の甲、アキレス腱の付け根、ひざ、かかと、ひじ、手首の関節に症状が出ることもあります。痛風発作がおさまっても、適切な治療や生活改善をしなければ、多くの場合、1年以内に同じような発作が起き、次第に発作の間隔が短くなっていきます。そもそもなぜ、ある日突然、激痛に襲われるのでしょうか。痛風の背景には、「高尿酸血症」があります。高尿酸血症は血液中の尿酸値が高くなった状態で、正常値7mg/dlを超えると、高尿酸血症となります。尿酸は新陳代謝によって発生する老廃物で、通常は一定に保たれていますが、尿酸が過剰につくられたり、排出がうまくいかなくなったりすると、一定量を超えてしまいます。尿酸値が高い状態が続くと、血液中に溶け切れなかった尿酸が結晶化して、関節や組織にたまっていきます。関節に尿酸の結晶がたまると、免疫細胞である白血球がそれを異物であると認識し、炎症を起こして強い痛みや腫れを引き起こすのです。高尿酸血症になるとすぐに痛風を発症するわけではなく、尿酸値が高い状態が数年続くことで、痛風を発症します。痛風の治療は、まず痛み止めで痛みをおさえ、再発予防のために原因となる高尿酸血症を治療します。血中の尿酸値を下げるための尿酸産生抑制薬、尿酸排泄促進薬を使用します。高尿酸血症は、痛風発作の原因となるだけではなく、糖尿病や脂質異常症、高血圧を合併しやすいといわれています。また、心臓病や脳卒中のリスクになることもわかっています。高尿酸血症によって、関節だけではなく腎臓に尿酸の結晶がたまると腎臓の機能が低下し、腎不全となることもあります。尿酸の結晶が尿路にたまると、尿路結石ができることもあります。このように「痛風予備軍」とも呼ばれる高尿酸血症は、さまざまな病気と関連するのです。「令和4年国民生活基礎調査」によると、痛風で通院している患者は130万6千人いて、そのうち男性が123万6千人、女性が7万人、圧倒的に男性に多いことがわかります。これほど大きな男女差が出る理由は、女性ホルモンにあります。女性ホルモンは尿酸の排泄を促す作用があるので、女性は高尿酸血症になりにくいのです。一方閉経後に女性ホルモンの分泌量が減ると、尿酸値は少し上昇します。高尿酸血症の患者は痛風患者の10倍いるといわれているので、推定約1300万人となります。痛風患者は増加傾向にあり、約20年前と比べると2倍以上に増えています。食事内容の欧米化、動物性た突然激痛に襲われる痛風発作再発を繰り返すことも血液中の尿酸値が高くなると痛風の発症リスクが上がる患者数は20年前の2倍に圧倒的に男性に多い11■ LABO – 2025.03世界で患者数が増え続けている痛風。日本では130万人を超える患者がいて、予備軍はその10倍ほどいると推定されています。痛風はかつて“ぜいたく病”とも呼ばれ、生活習慣が主な原因だと考えられてきましたが、近年の研究により、遺伝的な要因も重要であることがわかってきました。遺伝子の個人差に応じた検診や予防、治療が開発、普及していくことが期待されています。Medical Trendメディカル・トレンド世界的に増加中の痛風患者遺伝子の領域が特定される

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