介護する人、される人、両者にメリットがあるロボット日本発のアザラシ型ロボット「パロ」(産業技術総合研究所が開発)もその1つです。アザラシの赤ちゃんをモデルに開発されたロボットで、視覚、聴覚、触覚などがあり、光の変化を感じるほか、言葉を理解したり、撫でられていることを認識したりすることができます。デンマークでは国家プロジェクトとして、2006~2008年にパロの認知症高齢者に対するセラピー効果を評価。その結果を踏まえて、多くの自治体がパロを公式導入しています。現在はデンマークだけではなく、30カ国以上の病院や介護施設で活用されています。介護ロボットには、移動や入浴などを支援するロボットもありますが、パロのような動物型ロボットは「コミュニケーションロボット」に分類されます。コミュニケーションロボットは、種類によってさまざまな機能が搭載されています。たとえば次のような機能があります。・発話機能・音声認識機能・見守り機能・お知らせ機能コミュニケーションロボットがもたらす認知症の人に対する作用としては、BPSD(行動・心理症状)の軽減があります。認知症の人は、認知機能の低下による症状だけではなく、暴言や暴行、ひとり歩きといったBPSDが出ることがあります。認知症の人は認知機能が低下しても脳の情動を司る部分の機能は、比較的維持されることがわかっています。コミュニケーションロボットとの触れ合いが認知症の人の感情に働きかけることで、BPSDを軽減することが期待されているのです。認知症の人のBPSDが軽減することは、介護者の負担が軽くなることにもつながります。また、介護施設で働く介護者にとっては、たとえ数分程度であっても高齢者がコミュニケーションロボットと関わる時間ができれば、そのぶん時間的な余裕ができ、負担が軽減するともいえます。さらに、一人暮らしの高齢者に対する効果も期待されています。一人暮らしの高齢者は増加傾向にあり、内閣府の調査によると、2020年の65歳以上の単身世帯は男性15%、女性22・1%で、今後も増加することが見込まれています。高齢者の一人暮らしで問題になることの1つは、人と交流する機会が少なくなりやすいことです。社会的孤立は、要介護の手前の状態であるフレイルを加速させる要素であり、認知症の発症リスクを高める一因でもあります。コミュニケーションロボットが高齢者の話し相手になったり、ペットの代わりになったりすることで高齢者の孤独感を和らげることが、さまざまな実証実験から明らかになっています。近年はコミュニケーションロボットが心理療法の1つ「ロボット・セラピー」に役立つとして注目され、高齢者だけではなく周囲の人たちにも心理的効果をもたらすことが明らかになってきています。AI技術の急速な進歩によって、スムーズに対話できるような高度なコミュニケーションロボットも登場し、高齢者や認知症の人のQOL(生活の質)を向上させるロボットへの期待がますます高まっています。13移乗支援普及率 9.7%移動支援普及率 1.2%入浴支援普及率 11.2%見守り・コミュニケーション普及率 30.0%排泄支援普及率 0.5%介護業務支援介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等への介護サービス提供に関わる業務に活用することを可能とする機器・システム介護業務支援普及率 10.2%機能訓練支援介護職等が行う身体機能や生活機能の訓練における各業務(アセスメント・計画作成・訓練実施)を支援する機器・システム食事・栄養管理支援高齢者等の食事・栄養管理に関する周辺業務を支援する機器・システム認知症生活支援・認知症ケア支援認知機能が低下した高齢者等の自立した日常生活または個別ケアを支援する機器・システム※赤破線で囲っている、排泄支援(排泄予測・検知)、見守り(施設)、見守り(在宅)、コミュニケーション、介護業務支援、機能訓練支援、食事・栄養管理支援、認知症生活支援・認知症ケア支援の項目においては他の機器・システムとの連携を定義文において明記※項目別の普及率は、『令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査結果』を引用※緑枠線の、新たに追加される機能訓練支援、食事・栄養管理支援・認知症生活支援・認知症ケア支援の3項目に関しては、上記調査を実施していないため、普及率は未記載出典:厚生労働省「介護テクノロジー利用の重点分野の全体図と普及率」■ LABO – 2025.02移乗支援(装着)介助者のパワーアシストを行う装着型の機器移乗支援(非装着)介助者による移乗動作のアシストを行う非装着型の機器移動支援(屋外)高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器移動支援(装着)高齢者等の外出等をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器移動支援(屋内)高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器排泄支援(排泄物処理)排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置の調整可能なトイレ排泄支援(排泄予測・検知)排泄を予測又は検知し、排泄タイミングの把握やトイレへの誘導を支援する機器排泄支援(動作支援)ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する機器見守り(施設)介護施設において使用する、各種センサー等や外部通信機能を備えた機器システム、プラットフォーム見守り(在宅)在宅において使用する、各種センサー等や外部通信機能を備えた機器システム、プラットフォーム入浴支援入浴におけるケアや動作を支援する機器コミュニケーション高齢者等のコミュニケーションを支援する機器★参考資料厚生労働省「『ロボット技術の介護利用における重点分野』を改訂しました」、健康長寿ネット「非薬物療法のためのアザラシ型ロボット・パロによる神経学的セラピー」図表 介護テクノロジー利用の重点分野の全体図と普及率Medical Trendメディカル・トレンド
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