Labo_No.553
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令和6年度「第検25回査一が般公く募エれッたセイもの」高橋由梨(25歳/東京都)入賞作品紹介優秀賞中学2年の春、私は健康診断の尿検査に引っかかった。「えー、健康診断で引っかかったのなんて初めて!」当時の私はショックを受けたが、意外にも、他のクラスメイトもちらほら尿検査の再検査を受けることになっているようだった。生理が終わって間もないタイミングだったし、まあ、そういうこともあるだろうと思いつつ、学校からの指示もあり、私は別日に再検査のため病院へと赴いた。結果は特に問題なし。ただ、少し気になる数値があるから、定期的に病院に通ってほしいと言われた。しかし、帰宅後、それを母に伝えたところ、思い切り嫌そうな顔をされてしまったのである。「問題ないならわざわざ通わないでいいでしょ、お金がもったいない。どうせ病院のお金稼ぎのために言ってるのよ」お金もないし、勝手に病院に通うこともできない。私もそこまで深刻にとらえていなかったこともあり、次に検査をしたのは中学3年の健康診断。つまり丸々1年経ってからのことであった。「これは、大きな病院に診てもらう必要がありますね」人で来院した私に、医者の先生は沈痛な面持ちで告げた。曰く、クレアチニンの値がかなり高く、腎機能が低下している恐れがあるとのことだった。その時初めて、私は自分の身体に何かが起こっていることを自覚し親にこう言われてしまっては、また尿検査で再検査となり、一て、取り乱しつつも紹介状を受け取って病院を後にしたのである。だが、事情を話せど紹介先の病院へ行くのに、母は相変わらずよい顔をせず、結局は自分の保険証をこっそり持ち出して、祖母に頼んで病院へ連れていってもらうことになった。「これは、即入院ですね」「えっ、入院って……。今すぐにですか?」「井上さんはANCA関連腎炎という、進行が早い病気の可能性が高いです。すでに腎機能は50%程度しか残っておらず、これ以上悪化すると透析の恐れもあり、早く入院して検査と治療をする必要があります」透析は知っていた。祖父が定期的に行っており、とても痛みを伴うものだと。あれを、私が?これからの人生ずっと?目の前が真っ暗になるような心地で、隣の祖母は泣いていた。その後すぐ、母では話にならないからと、仕事中の父に電話をして入院の手続きをしてもらったが、私の胸は今にも不安で押しつぶされそうだった。結果として、先生方が懸命に行ってくれた検査や治療のおかげで、腎機能はそれ以上悪化することなく、秋頃には普通に学校に通えるようになり、受験することもできた。しかし、いつ再発するかもわからない病気なので、あれから10年経った今でも、検査のための通院は続いている。大人になった今だからこそ切に思う。世の中の大人たち、特に子を持つ親は、お金や手間を理由に病気の検査をおろそかにしないでほしい。その怠惰は、これからの人生に長く影を落とすのだから……と。私の腎臓11■ LABO – 2025.02

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