Labo_No.552
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謹んで新春のお慶びを申し上げます。旧年中は当協会の事業活動に対して、格別のご理解ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。さて当協会は、令和5年3月に満み出していますが、臨床検査を取り巻く状況は、さらに厳しさを増し、多くの課題があります。まず、人材の確保が大きな課題となっています。臨床検査は、各医療機関から毎日検体を集荷する物流面も非常に重要ですが、集荷部門を中心に人材不足が顕著になっています。日衛協では『検査前工程の標準化ガイドライン』などを策定しているように、検体の取扱いには温度管理などに十分な注意が必要で、ただ車の運転ができればよいだけではなく知識を備えなければなりません。さらに、2024年1月に発生した能登半島地震では、1、2本の検体のために往復6時間をかけて集荷を行うケースもあったと聞いており、有事の際の検体集荷を見直す必要が出てきています。さらに、政府が推進する医療デジタルトランスフォーメーションでは、デジタル庁が開発する標準型電子カルテと衛生検査所の連携が、モデル事業をスタートする段階まで進んでいます。当会でも厚生労働省主催の説明会やアンケート等で協力しておりますが、臨床検査の標準化を踏まえた議論は避けられないでしょう。しかし、様々な課題は、皆様の協力のもと必ず乗り越えていけると確信しています。令和6年の診療報酬改定では、医療機関に勤務する医療従事者を対象とした、賃上げ、働き方改革・人材確保を目的とした診療報酬の増点・新設が行われております。我々は、検体集荷に診療報酬点数を付けて、受託検査事業継続への支援を行っていただけるよう、次の診療報酬改定に向けて要望してまいります。新型コロナウイルス流行当初は、核酸検出(PCR)検査(委託)には検体搬送で450点の加算がありました。一般検査にも同様の対応を求めていきたいと考えております。また、医療機関向けの「臨床検査における労務費の適切な価格転嫁」要請文書を作成し公表しておりますので、会員企業それぞれの事情にあわせて使用していただきたいと思います。日衛協もアンケートなどで協力した厚生労働科学研究「衛生検査所等の適切な登録基準の確立のための研究」では、衛生検査所の現状を踏まえた提言を盛り込んでいただきました。報告書では、平成30年の医療法改正で負担が増大した帳票類記載内容の見直しや、小規模施設の雇用負担を考慮して、非常勤精度管理責任者を現行の登録検査分野数3以下から4以下に緩和する、という考えなどが示されています。この報告書の提言が今後、厚生労働省の政策などに反映されることを強く期待しています。また、東日本大震災を受けて2012年に初版を発行した『衛生検査所のためのBCP(事業継続計画)ガイドライン』を改訂しました。初版は会員企業にBCP策定着手を促す内容でしたが、改訂した第2版は、会員企業同士が連携して計画を検討し、被災で業務が遂行できなくなった場合に、一時的に他の会員企業に業務委託できるよう準備することなどを推奨しています。日衛協は創立以来、国民医療を支えるという決意と使命をもって様々な事業を推進してきました。「検査精度の維持・向上こそが登録衛生検査所の生命線である」という理念に基づき、根幹である「精度管理」、そして、それを守る人材を育てる教育を重点事業として推進してきたのは、臨床検査が、医師が日常臨床において行う的確な診断、治療、予防医学の健診においても必要不可欠な分野であり、衛生検査所は、常に信頼される正確な検査結果を臨床や依頼元にお届けして、各地域の医療に貢献する役割を担っているからです。これからも当協会は、医療に欠かすことができない臨床検査を業とする衛生検査所の団体として、会員相互が協同し、関係団体との緊密な連携のもと事業を推進してまいりますことを申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。一般社団法人日本衛生検査所協会会長 久川 芳三7■ LABO – 2025.0150年を迎え、今新しい次の50年に踏

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