限られた病院でしか治療を受けられないロボット手術が保険適用に進歩する大腸がんの治療人口10万対100歳以上95-99歳90-94歳85-89歳80-84歳75-79歳70-74歳65-69歳 60-64歳55-59歳50-54歳45-49歳40-44歳35-39歳30-34歳25-29歳20-24歳15-19歳10-14歳5-9歳00-4歳が再び出てきたタイミングで手術をしたとしても、最初から通常のタイミングで手術を行った場合と、生存率は変わらないことが報告されています。「watch&wait」の最大のメリットは、手術に伴う合併症や人工肛門、排便障害(便失禁や頻便など)、排尿障害、性機能障害(勃起不全や射精障害など)といった術後の後遺症を避けることができ、自分の肛門を残せるということです。欧米では広く普及し、治療ガイドラインでも選択肢の1つとして挙げられています。現在、日本では先進的な病院で、臨床試験として安全性や有効性を確認していますが、今後広く普及していくことは間違いないといわれています。一方でデメリットもあります。1つは日本ではまだ研究段階で、限られた病院でしか実施されていないという点です。安全性や有効性を確かなものにするためには、日本でのデータを積み重ねていく必要があります。また、薬物治療や放射線治療の効果を事前に予測することはできないので、これらの治療を受けてみなければ「watch&wait」ができるかどうかがわかりません。がんの消失が確認でき、「watch&wait」がスタートしたら、2年間くらいは3カ月に1回程度、定期的に内視鏡検査、MRI検査、直腸診を受けて、がんが再び増大していないかどうかを診ていくことが不可欠です。2年を過ぎると、再び増大する可能性が低くなっていくので、定期検査の頻度も少なくなります。「watch&wait」という名のとおり、必ず定期検査を受けることではじめて成立する治療です。がんの再増大の発見が遅れると、進行してほかの臓器に転移するリスクがあります。患者がこの治療についてよく理解することも非常に大事です。「watch&wait」をした結果、現状のデータでは、約20~30%の人はがんが再び増大するので、手術が必要になります。現在、大腸がんの手術は、ロボット手術を含めた腹腔鏡手術が主流になっています。お腹に開けた小さな穴から器具を挿入して操作し、がんがある腸管やリンパ節を切除します。腹腔鏡手術は傷が小さく、回復が早いのがメリットです。ロボット手術は2018年に直腸がん、2022年には結腸がんでも健康保険が適用されるようになりました。大腸がんでは、手術ができない進行がんに対する薬物治療の進歩も著しく、使用できる薬の種類が大幅に増えています。薬物治療がうまくいき、手術ができるようにまでなる患者も増えているといわれています。最近では、遺伝子検査によって遺伝子変異を多く持つタイプであることが判明した人は、「免疫チェックポイント阻害薬」だけでがんが消失することも明らかになっています。今後も、特異的な遺伝子変異を対象とした新しい薬が登場する見込みです。からだへの負担がかからない治療や術後のQOLが保たれる治療だけではなく、治る大腸がんも増えていくことが期待できます。600500400300200100出典:国立がん研究センターがん情報サービス■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■100%97.380%60%40%20%0%出典:国立がん研究センターがん情報サービス★参考資料国立がん研究センターがん情報サービス「大腸がんについて」、全国がんセンター協議会加盟施設の生存率協同調査、がん研有明病院「直腸癌に対するwatch&wait療法(手術しない治療)」限 局領 域遠 隔男性女性75.3*限局=がんが原発臓器に限局している 領域=原発臓器の所属リンパ節や隣接 する臓器に転移がある 遠隔=離れた臓器に転移がある17.319■ LABO – 2025.01■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■Medical Trendメディカル・トレンド
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