――念願のオリンピックに初出場した東京大会では、ROC(ロシア・オリンピック委員会)に惜敗して銀メダル。そこから次のパリ大会へ向けての挑戦が始まったのですね。萱 初出場の喜びはありましたが、金メダルしか狙っていなかったので、僅差の銀メダルは本当に悔しかったです。すぐに気持ちを次のパリでの金メダルに切り替えました。ただ、初めて体験したオリンピックは、出場国の数は多いし、新聞、テレビなどいろいろな媒体で注目され、世界選手権とは規模の違う大きな世界で驚きました。東京大会では無観客で寂しかったこともあり、次のパリ大会で金メダルを狙う新たなシナリオはでき上がりました。東京大会がコロナ禍で1年延期になり、5 にこなすのがチームのためになると考えまパリまでは3年間しかないので、練習は計画的に進めました。自分のよさである「安定感」はチームに絶対に必要だと考えて、ミスのない安定感のある演技を究めることに集中しました。――「失敗しない男』、美しくミスをしない体操の追求ですね。そして、パリ大会では、体操は個人競技ですが、最も大切なチームワークの要となる主将の重責を担いました。萱 主将はチームを把握する立場ですが、あまり意識せず、まずは自分の演技を堅実した。とにかく安定感のある演技をすることに注力して、みんなにも気を配るようにしました。チームの一番の目標は団体での金メダルで、自分のミスはみんなのミス、つまり日本のミスになるので、プレッシャーを感じることもあります。でも自分は団体が一番好きで、やりがいもあります。――決勝前夜のチームミーティングでは、どんなことを話し合ったのですか?萱 「自分は、銀は考えていない、2番は絶対に嫌だ」とキャプテンとしての気持ちを素直に伝えました。コーチたちも思いを述べ、それで一層チームがまとまって、一つの円になった気がしました。――迎えた決勝は、中国と接戦になり、日本中が手に汗を握りましたが、現場の雰囲気はどうでしたか? ら選手を励ます熱い主将の姿は、映像を通して垣間見えました。萱 中国とのデッドヒートで観客の反応もすごかったし、追い上げられて鉄棒を残し大差をつけられました。「最後まで諦めない」と、合宿からずっと全員で言い続けてきましたから、5人が勝ちを信じて演技したことが、金メダルにつながったと思います。力の点で中国が少し上回っていたかなと、終わってみて思いますが、チーム力では日冷静沈着でありなが本に圧倒的な強さがありました。選手だけではなく、補欠やコーチ、スタッフのみんなが団結していて、本当にいいチームで、すべてがしっかりと噛み合って、大きなパワーになった感じがします。――最後の鉄棒を残し、中国との大差で不安はあったと思いますが、揺らぐことなく強い気持ちで立ち向かい、チーム全員が諦めない気持ちを持ち続けていることが、テレビ画面からも伝わってきました。萱 演技でつなぐことも大事ですが、自分が演技していないときも大事です。いつでも誰かが演技をしているので、しっかり声を出して応援して、ある意味ずっと演技をして戦っているような3時間でした。床とあん馬で点数をとるのが日本のプランでしたが、思うようにいかず序盤は不調。でもオリンピックは最後まで何が起こるかわからないし、諦める理由はない。やりようはあると思って、自分とチームを鼓舞し続けました。――最後の鉄棒で、橋本大輝選手が着地した瞬間は感動的でした。本当に素晴らしい演技で劇的な大逆転でした。萱 表彰台ではうれしいというか、夢か現実かどちらかわからない状態でした。8歳の頃から思い描いたものがやっと叶った。いろいろあっての結果なので、重みがあって胸がいっぱいになりました。電光掲示板に日本が1位となっているのが信じられないというか、ほっぺたをつねってみたりして……。本当に不思議な感覚でした。初の東京オリンピックは僅差でR OCに敗れ無念の銀メダルパリオリンピックで花開いたチームワーク諦めない気持ちが奇跡の大逆転に!■LABO – 2024.11パリオリンピックの団体で金メダルを獲得。「諦めない気持ちが実りました!」プレッシャーから解放された星良さんと所属先のセントラルスポーツとして出場した全日本団体選手権3位(2023年)インカレに出場。「助け合って演技ができました!」(2018年)
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