Labo_No.548
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5〜90〜4根本的な治療の研究開発が進む0 剤 行います。症状の程度などにあわせて、主に次の薬を使用します。・5SA(アミノサリチル)製潰瘍性大腸炎の基本となる薬で、大腸の炎症を抑えます。・ステロイド活動期の炎症を抑えます。長期間使用することはありません。・免疫調整薬ステロイドを減量、中止したことで再燃した場合に使用します。・免疫抑制薬ステロイドで炎症を十分に抑えられない重症の場合に使用します。これらの薬物療法で効果がない場合は、近年、生物学的製剤を使用するケースが増えています。既存の治療薬とはメカニズムが異なり、特定のサイトカイン(さまざまな細胞間で主要な情報交換を担うたんぱく質性因子の総称)の過剰な産生を抑制します。また、薬物療法以外の治療として、「血球成分除去療法」があります。血液をいったん体外に取り出して、特殊な筒に通し、炎症を引き起こす特定の血球成分を除去して、再び体内に血液を戻す方法です。ステロイドで効果が得られない中等度から重症の患者に実施します。それでも効果を得られなければ、大腸を摘出する手術が検討されることもあります。寛解導入療法で寛解の状態になったら、再燃を予防するために長期にわたって「寛解維持療法」を行います。主に「5 SA製剤」を使用します。症状がある時期には、医師の指示通りに服薬できるものですが、症状がない時期に長期間にわたって服薬を継続するのは難しくなっていきます。しかし服薬を継続した場合は、寛解維持率が約90%なのに対して、服薬を中断してしまった場合は約60%が再燃しています。服薬を続けることで長期にわたって症状をコントロールできるのです。炎症を抑えることで、大腸がんのリスク低減につながることも報告されています。潰瘍性大腸炎の治療は炎症を抑えることを目的とするもので、長期にわたって服薬を継続しなければならないというのが難点です。そこで潰瘍性大腸炎を根本的に治すための方法が、現在大学などさまざまな機関で研究されています。京都大学大学院医学研究科消化器内科の「潰瘍性大腸炎治療薬開発プロジェクト」では、2021年に潰瘍性大腸炎の患者の約92%が特定のたんぱく質に対する自己抗体をもっていることを発見。この自己抗体は、潰瘍性大腸炎ではない人には、ほとんどみられないものでした。そこで、この自己抗体を測定する診断キットを開発し、2025年の保険適用を目指しています。さらに自己抗体を産生する特定の免疫細胞だけをターゲットにする治療法の開発にも取り組んでいます。順天堂大学医学部消化器内科では、「腸内細菌叢移植」の臨床研究を実施。腸内細菌叢移植は、健康なドナーの便から作成した腸内細菌叢溶液を、内視鏡によって患者の腸内に注入し、バランスのとれた腸内細菌叢を構築する方法で、欧米ではすでに実用化されています。同大学ではより効果的に実施するために、移植の前処置として3種類の抗菌薬を投与する方法を導入しています。東京医科歯科大学などの研究チームは、2022年に、腸の粘膜から採取した幹細胞を培養した「オルガノイド」を患部に移植する臨床研究を世界で初めて実施しました。患者の腸の正常な部位から、粘膜の細胞のもととなる幹細胞を採取し、定められた期間培養して球状のオルガノイドにして、同じ患者の大腸に移植するという方法です。粘膜が再生すれば、根治につながることが期待されています。長期的な服薬は、副作用などの問題で、薬を減量したり、中止したりせざるをえないこともあります。効果的で副作用の少ない根本的な治療法が確立されることが望まれます。201010〜1415〜1920〜24-A25〜2930〜3440〜445035〜〜5439年 齢(歳)45〜4955〜59男性女性60〜6465〜6970〜7475〜7980〜13■ LABO – 2024.09★参考資料「難病情報センター 潰瘍性大腸炎」、「潰瘍性大腸炎の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識」(難治性炎症性腸管障害に関する調査研究)、「潰瘍性大腸炎ガイドブック」(ファイザー)、 京都大学大学院医学研究科消化器内科の「潰瘍性大腸炎治療薬開発プロジェクト」、順天堂大学医学部消化器内科「潰瘍性大腸炎に対する腸内細菌叢移植」、 東京医科歯科大学プレスリリース 「世界初、自家腸上皮オルガノイドを潰瘍性大腸炎患者に移植」図表2 潰瘍性大腸炎の推定発症年齢(%)-AMedical Trendメディカル・トレンド

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