令和5年度(第49回)の「臨床検査精度管理調査結果検討会」が、6月4日にZoomを使用した完全ウェブ方式で行われました。精度管理委員会が中心となり毎年行われている精度管理調査は、日衛協が積極的に取り組んでいる重要な事業の1つです。49回目を迎えた今年の調査結果検討会の模様をレポートします。色検査の成績は前回に比べてよく、特異性の調査として出題したMERSーCoVは全施設が陰性と報告したこと、等の各調査結果の講評が行われました。完全ウェブ方式で開催された49回目の臨床検査精度管理検査結果検討会は、精度の維持・向上に継続して努めることをあらためて確認し、終了しました。「精度管理の基本、ABC」をテーマに特別講演を開催国民医療を支える存在であるために講演者は、順天堂大学医療科学部臨床工学科の佐藤正一先生。「われわれが求めようとしているのは、あくまで母集団の精度です。標本情報を基に、母集団の状況を推定する方法がとられます。精度管理では、正規分布という数学的モデルを仮定したデータ処理、パラメトリック法が行われます。パラメトリック法を行ううえで重要なことは、データのばらつきを意識することです。内部精度管理ではデータの動きをよく観察してください。データを管理するうえでは、適切な平均値と標準偏差(SD)の設定が求められます。SDはデータ数が少ないと不安定であるため、日々の管理値をさらに加えるか検討するべきで、適切なSDかを常に監視する必要があります。内部精度管理手法として、大きく管理試料を用いる手法と患者試料を用いる手法の2つに分かれます。最も優れた統計手法は、リアルタイムで測定状態を管理して見逃せない重要な変化を早期に発見するのに適したxーRs管理図法と考えます。管理図には、新しい試薬や機器の調整不良を原因とした、中心線の上下に連続して6~7点以上がプロットされるShift現象や、機器の摩耗、管理試料や試薬の劣化が原因と考えられ、データが連続的に7点以上の上昇、下降のパターンを示すTrend現象などの問題があります。また、内部精度管理の限界の設定に関しては、項目の特徴や測定濃度を考慮して考えることを推奨します。複数の機器間差を管理する場合は、使用目的などを考慮する必要があります。内部精度管理の限界を理解してデータ管理を行ってください」参加者は佐藤先生の話に真剣に聞き入り、大変有意義な講演となりました。日本衛生検査所協会の臨床検査精度管理調査は、わが国の代表的な検査所間比較プログラムの1つとされています。同調査は1974年から始まり、今回で49回目となります。令和5年度第49回調査への参加は253施設でした。今回の検討会も、Zoomを使用して開催されました。委員長の高木康先生(臨床化学的検査・昭和大学)は、「臨床検査の精度管理は、測定結果に対する信頼性、測定における正確さと精密さです。患者は、いつ、どこで、測定しても同じ医学的判断ができることを希望しています。精度管理で重要なことは、過去の検査データとの比較と施設間誤差の解消です。外部精度管理調査は、自施設の測定値の全国レベルでの位置、そして測定系別利用頻度の傾向、測定法別の測定値変動幅を把握し、適切な測定系への移行を図ることを目的としています。本年度、ある中学校の入学試験問題で、新型コロナウイルス感染症(COVIDー19) に関して、イムノクロマトグラフィによる抗原検査の原理と偽陰性の原因等について出題されました。新型コロナウイルスによりPCR検査や抗原検査などの臨床検査への国民の関心が大きくなり、国民の知識として広く浸透しています。そして、臨床検査の精度管理は法律にも明記されました。今後もわれわれは精度管理に関する努力を怠らず信頼のある臨床検査結果を国民に届けましょう」と総評を述べました。また、山田俊幸先生(免疫血清学的検査・自治医科大学)からはTSHの方法間差は小さくなっており、NTーproBNPは調査項目として妥当であること、三ツ橋雄之先生(血液学的検査・慶應義塾大学)からは血球計数や血球形態検査の成績は良好で、凝固検査は例年同様に試薬間差が問題であったこと、菅野治重先生(微生物学的検査/新型コロナウイルス遺伝子検査・鹿島病院感染症診療支援センター)からは塗抹染11■ LABO – 2024.08「第49回 臨床検査精度管理調査結果検討会」の模様委員長の高木康先生血液学的検査担当の三ツ橋雄之先生免疫血清学的検査担当の山田俊幸先生微生物学的検査等担当の菅野治重先生特別講演を行う佐藤正一先生「第49回 臨床検査精度管理調査結果検討会」参加証日衛協News「第49回 臨床検査精度管理調査結果検討会」を開催
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