Labo_No.546
11/18

令和5年度第24回一般公募エッセイ木村弘之(71歳/山口県)「検査がくれたもの」入賞作品紹介努力賞かかりつけ医の近所の先生が、「血液検査にPSAの項目を加えましたから」と、何気なく、私に伝えた。その後、「PSAの値が少し高いので、近くの総合病院を紹介するので、ぜひ、受診してください」との説明があった。そして、紹介された病院で、3か月毎のPSAの数値の推移を見守ることにした。すると、低くならず基準より高い状態が続いた。その原因として、前立腺肥大か前立腺がんが考えられるので、CT検査、MRI検査、生検を受けることになった。結果、10か所のうち2か所からがんがみつかったが、転移はしていない。数ある治療のうち、私は「サイバー・ナイフ」の治療を受けることにした。「サイバー・ナイフ」とは、がんがある箇所に、CT検査、MRI検査とともに、金のマーカーを入れて、そこに放射線を照射するというものである。「サイバー・ナイフ」の設備がある病院は、全国でも27か所と少なく、たまたま私の住居地から車で1時間程の場所に、「サイバー・ナイフ」を有する病院があったので、そこに予約を入れた。「サイバー・ナイフ」は、一台5億円から6億円もする大変高価なものだ。入院してマーカーを入れることになった。また、たまたま血圧が高く、麻酔があまり効かず、私にとってはかなり痛く感じられた。しかし、絶対にがんに打ち克つという強い気持ちを持ち続けた。無事に、その手術は終わった。それから5回、「サイバー・ナイフ」の照射を受ける中、心の中で「神様、助けてください」と祈り続けた。1か月後の血液検査のPSAの値は、手術前の数値の約3分の1の数値に落ちていた。大変な幸いであり、私は安心した。あとは、3か月後のPSAの数値を測ることが、待たれる。8月の下旬である。術後、自分としては、身体が軽く感じられる。「まだ、やり残していることがある」と思っているので、人生において、やり残しがないように、私なりに全力を尽くそうと思っている。不思議なことで、あのとき、かかりつけ医の先生の「血液検査にPSAを加えましょう」との一言が、もしなかったら、また、もう少し遅れていたら、と考えると「ゾッとする」。転移していなかったから、「サイバー・ナイフ」が可能であった。ありがたかった。早期発見、早期治療の大切さを噛みしめている。妻や息子にも、迷惑をかけた。私も71歳になったので、あと何年生きられるかわからないが、やり残したことを成就させ、悔いのない人生であったと感じられるように、日々の努力を、この年になっても積み重ねていきたいと思う。「サイバー・ナイフ」、ありがとう。サイバー・ナイフ11■ LABO – 2024.07

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る