Labo_No.545
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酒類消費量は減っているのに多量飲酒する人は減っていない3つの要因国税庁の調査によると、少子高齢化やライフスタイルの変化などによって、酒類の国内市場は縮小傾向にあります。成人1人あたりの酒類消費量をみると、1989年度以降の調査では、92年度がピークで、2021年度までに3割程度減少しています。一方で多量に飲酒している人の割合は男女ともに減少していません。「国民・健康栄養調査」では、「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合」が男性は2010年には15・3%、2019年は14・9%でほぼ変わらず、女性の場合2010年は7・5%、2019年は9・1%で増えています。こうした背景をふまえ、厚生労働省は2022年10月から「飲酒ガイドライン作成検討会」を開催し、2024年2月に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(以下、飲酒ガイドライン)を公表したのです。欧米などでは、各国の文化や体質に合わせて飲酒に関するガイドラインを作成していますが、日本では飲酒の初のガイドラインとなります。飲酒ガイドラインの目的は、国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、自らの予防に注意を払って、不適切な飲酒を減らすために活用することです。具体的には飲酒による身体などへの影響について、年齢・性別・体質などによる違いや飲酒による病気・行動に関するリスクなどをわかりやすく伝え、そのうえで考慮すべき飲酒量や配慮のある飲酒の仕方、飲酒の際の留意点を示しています。飲酒による身体への影響について個人差があることはよく知られていますが、飲酒ガイドラインでは、年齢、性別、体質による違いを挙げています。①年齢による違い 高齢者は若いときと比べて同じ量のアルコールでも酔いやすく、一定量を超えると認知症を発症する危険性が高まるほか、飲酒による転倒・骨折、筋肉の減少の危険性が高まります。10代はもちろん20代の若年者についても、脳の発達の途中であり、多量飲酒によって脳の機能が落ちるというデータがあるほか、高血圧などのリスクも高まります。②性別による違い女性は一般的に男性と比べて体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も少ないことが知られています。女性ホルモンの働きによってもアルコールの影響を受けやすく、男性よりも少ない量、かつ短い期間での飲酒で、アルコール関連肝硬変になる場合があるなど、身体への影響が大きく出る可能性があります。③体質による違いアルコールを分解する体内の分解酵素の働きが強い人、弱い人がいます。分解酵素の働きが弱い人は、飲酒によって顔が赤くなったり、動悸や吐き気が起きたりすることがあります。こうした反応を「フラッシング反応」といいます。分解酵素の働きが弱い人は、長年飲酒して、フラッシング反応がなくなったとしても、アルコールが原因となる口の中のがんや食道がんのリスクは非常に     高くなります。さらに、過度な飲酒によるリスクとして「病気を発症するリスク」「行動面のリスク」という2点を挙げています。病気を発症するリスク長期にわたって大量に飲酒すると、アルコール依存症、生活習慣  12 お酒の影響を受けやすい2024.06 – LABO ■お酒は日本人の生活に深く浸透している一方で、不適切な飲酒はさまざまな病気を引き起こすことがわかっています。そこで厚生労働省は「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を作成し、2024年2月に公表しました。ガイドラインでは、飲酒による身体への影響について年齢・性別・体質による違いやリスクのある飲酒量などを示しています。とくに病気別の発症リスクと飲酒量までを具体的に解説している点などが注目されています。ガイドラインの具体的な内容について紹介します。Medical Trendメディカル・トレンド「飲酒ガイドライン」を初めて策定。疾患ごとに発症リスクが高まる飲酒量を示す

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