Labo_No.544
13/16

提供体制を整備すること、認知症の人やその家族などの相談体制を整備すること、早期発見や早期診断を推進することなど、8つの項目が掲げられています。政府は、内閣総理大臣を本部長とする「認知症施策推進本部」を設置し、2024年秋ごろに認知症基本法をもとにした「認知症施策推進基本計画」(以下、基本計画)を策定する予定です。大事なポイントとなるのが、認知症の人やその家族によって構成される「関係者会議」を設置し、意見を聞いたうえで策定することが義務づけられていることです。また、政府の基本計画をふまえて自治体もそれぞれ「都道府県計画・市町村計画」を策定する努力義務がありますが、ここでも認知症の人やその家族などの意見を聞くことが明記されています。認知症基本法の施行に先立って、政府は認知症の人やその家族、有識者を交えた「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」を実施してきました。2024年1月には、認知症施策推進本部の1回目の議事が開催され、高市国務大臣から会議のとりまとめについて説明がありました。例えば、認知症とともに希望を持って生きるという「新しい認知症観」の理解促進、認知症バリアフリーの推進や家族などが介護をしながら自分の人生を大切にできる環境・支援制度の整備、本人や家族などに役立つ研究成果が得られるような国の支援といった内容を基本計画に反映するなどの要望がありました。認知症基本法は、認知症に関する法律ではありますが、根本には国民一人ひとりが個性と能力を十分に発揮し、お互いに人格や個性を尊重しつつ支え合う社会を目指すという理念があります。超高齢社会において、こうした共生社会が実現できたら、誰もが希望を持って生きられる社会になるのではないでしょうか。基本計画の策定によって国民が期待できること13■ LABO – 2024.05認知症施策は、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、①~⑦を基本理念として行う。 ❶全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生活及び社会生活を営むことができる。❷国民が、共生社会の実現を推進するために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深めることができる。 ❸認知症の人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるものを除去することにより、全ての認知症の人が、社会の対等な構成員として、地域において安全にかつ安心して自立した日常生活を営むことができるとともに、自己に直接関係する事項に関して意見を 表明する機会及び社会のあらゆる分野における活動に参画する機会の確保を通じてその個性と能力を十分に発揮することができる。 ❹認知症の人の意向を十分に尊重しつつ、良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスが切れ目なく提供される。 ❺認知症の人のみならず家族等に対する支援により、認知症の人及び家族等が地域において安心して日常生活を営むことができる。 ❻共生社会の実現に資する研究等を推進するとともに、認知症及び軽度の認知機能の障害に係る予防、診断及び治療並びにリハビリテーション及び介護方法、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすための社会参加の在り方及び認知症の人が他の人々と支 え合いながら共生することができる社会環境の整備その他の事項に関する科学的知見に基づく研究等の成果を広く国民が享受できる環境を整備。 ❼教育、地域づくり、雇用、保健、医療、福祉その他の各関連分野における総合的な取組として行われる。❶認知症の人に関する国民の理解の増進等 国民が共生社会の実現の推進のために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深められるようにする施策 ❷認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進 ・認知症の人が自立して、かつ、安心して他の人々と共に暮らすことのできる安全な地域作りの推進のための施策 ・認知症の人が自立した日常生活・社会生活を営むことができるようにするための施策 ❸認知症の人の社会参加の機会の確保等 ・認知症の人が生きがいや希望を持って暮らすことができるようにするための施策 ・若年性認知症の人(65歳未満で認知症となった者)その他の認知症の人の意欲及び能力に応じた雇用の継続、円滑な就職等に資する施策 ❹認知症の人の意思決定の支援及び権利利益の保護 認知症の人の意思決定の適切な支援及び権利利益の保護を図るための施策 ❺保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備等・認知症の人がその居住する地域にかかわらず等しくその状況に応じた適切な医療を受けることができるための施策 ・認知症の人に対し良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスを適時にかつ切れ目なく提供するための施策 ・個々の認知症の人の状況に応じた良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるための施策 ❻相談体制の整備等・認知症の人又は家族等からの各種の相談に対し、個々の認知症の人の状況又は家族等の状況にそれぞれ配慮しつつ総合的に応ずることができるようにするために必要な体制の整備 ・認知症の人又は家族等が孤立することがないようにするための施策 ❼研究等の推進等 ・認知症の本態解明、予防、診断及び治療並びにリハビリテーション及び介護方法等の基礎研究及び臨床研究、成果の普及等 ・認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすための社会参加の在り方、他の人々と支え合いながら共生できる社会環境の整備等の調査研究、成果の活用等 ❽認知症の予防等・希望する者が科学的知見に基づく予防に取り組むことができるようにするための施策 ・早期発見、早期診断及び早期対応の推進のための施策 ※その他認知症施策の策定に必要な調査の実施、多様な主体の連携、地方公共団体に対する支援、国際協力★参考資料厚生労働省「共生社会の実現を推進するための認知症基本法について」認知症基本法の基本理念認知症基本法の基本的施策Medical Trendメディカル・トレンド

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る