▼橋本病▼問診▼触診▼血液検査①甲状腺機能検査②自己抗体検査います。ところが、甲状腺に対する自己抗体「TSH受容体抗体(TRAb)」や「甲状腺刺激抗体(TSAb)」ができると甲状腺が刺激を受け続けるため、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまうのです。甲状腺ホルモンが多い状態が続くと全身の代謝が高まり、動悸、頻脈、手指の震え、多汗などのさまざまな症状が現れます。バセドウ病を引き起こす要因は、はっきりとはわかっていませんが、遺伝的素因と環境要因(強いストレス、喫煙、ヨウ素の過剰摂取、ウイルス感染など)が複雑に絡み合って発症にいたるのではないかと考えられています。橋本病は、甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気で、バセドウ病と同様に自己免疫疾患です。橋本病では甲状腺自体の細胞を攻撃する自己抗体がつくられるため、甲状腺の機能低下が起こり、甲状腺ホルモンの分泌が減少します。橋本病の自己抗体は、「抗サイクログロブリン抗体(TgAb)」と「抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)」です。ただし、自己抗体に攻撃されてもすぐに甲状腺の機能が低下するわけではなく、機能が保たれている間は症状が現れないため、病気に気づかないことがあります。しかし、攻撃を受け続けていると徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌量が低下していきます。図表3は、バセドウ病と橋本病の主な症状です。それらと症状が似ている病気が多く、甲状腺に異常が起きていると知らずにさまざまな診療科を受診している患者さんが多くみられます(図表4)。甲状腺の検査は、一般的に次のように進められます。自覚症状、持病、使っている薬、病歴、アレルギーの有無、血縁者の病歴などを聞きます。甲状腺に触り、腫れやしこりの有無、大きさ、性状(硬さなど)などを調べます。血液中の甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度を測定し、甲状腺ホルモンの過不足を調べます。バセドウ病や橋本病が疑われる場合は、自己抗体の有無や程度を調べます。バセドウ病では、多くの場合、自己抗体の「TRAb」や「TSAb」が陽性になります。ただし、前述の橋本病の自己抗体「TgAb」と「TPOAb」が陽性になることも少なくありません。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ー5■ LABO – 2024.04*バセドウ病眼症:治療が必要なほどのバセドウ病眼症はバセドウ病の5%程度。発症するとものが二重に見えたり、視力に影響したりすることがある。**高齢者の場合は逆に活動量が落ち、食欲が低下してやせていくことが多い。診療科循環器内科糖尿病・代謝内科脳神経内科(もの忘れは 認知症と似ている)精神科・心療内科産婦人科(更年期障害の 症状と似ている)産婦人科消化器内科皮膚科泌尿器科(男性不妊症、 男性更年期障害)眼科甲状腺の病気の症状動悸、息切れ、頻脈、徐脈、不整脈血糖値の上昇、コレステロール値の上昇もの忘れ、手足の麻痺うつ状態(無気力)多汗、無気力、疲れやすい、月経のトラブル、無排卵体重の増減、下痢・便秘皮膚の乾燥、かゆみ、脱毛性欲減退、女性化乳房目の奥の痛み、眼球突出、ものが二重に見える、視力低下バセドウ病・首元が腫れる (軽度の場合もある)・眼球が突出する (バセドウ病眼症*)・動悸、息切れ、頻脈 (脈拍数が多い)・血糖値の上昇・暑がり、多汗・手指が震える (男性は手足が麻痺することも)・イライラする・不眠・皮膚のかゆみ・爪の変形・髪が抜ける・食べてもやせる** (カロリー消費が増えるため)・月経不順、無月経・下痢気味橋本病・首元が腫れる (逆に甲状腺が小さくなることもある)・気力がなくなる・疲れやすい・もの忘れしやすい・いつも眠い・徐脈 (脈がゆっくりになる)・コレステロール値の上昇・貧血・食欲の低下・寒がり・全身にむくみが出る・皮膚の乾燥・声がかすれる、低くなる・太る (代謝が落ち、消費カロリーが少なくなるため)・筋力の低下・月経過多、無排卵・便秘気味図表4 他科を受診するきっかけとなる症状図表3 バセドウ病と橋本病の症状
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