▼甲状腺ホルモンの過不足で起こる病気①甲状腺中毒症(バセドウ病など)②甲状腺ホルモン低下症(橋本病)▼甲状腺に腫瘍ができる病気▼バセドウ病甲状腺の病気は2種類に大別どちらも女性に多い病気バセドウ病と橋本病ではほぼ反対の症状が現れる切な治療を受け、健康を取り戻すためには、甲状腺の病気についてきちんと理解しておくことが重要です。甲状腺の病気には、「甲状腺ホルモンの過不足で起こる病気」と「甲状腺に腫瘍ができる病気」の大きく2つに分けられます。血液中の甲状腺ホルモンが過剰になった状態を「甲状腺中毒症」といいます。そして、中毒症の中でも甲状腺がホルモンをつくり過ぎて起こる病気が「甲状腺機能亢進症」で、その代表が「バセドウ病」です。20~30代の女性に多く、男女比は1:5~7です。 甲状腺中毒症には、ほかに甲状腺の細胞が壊れて甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出す病気もあります(図表2)。 甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気の代表が「橋本病」です。30~50代の女性に多く、症状の現れない潜在性のものを含めれば、成人女性の約10人に1人が橋本病と考えられる、大変頻度の高い病気です。男女比は1:10程度と、バセドウ病よりさらに女性に多い病気です。甲状腺腫瘍には、良性のものと悪性のもの(甲状腺がん、甲状腺リンパ腫)がありますが、甲状腺腫瘍のおよそ9割は良性といわれています。日本の甲状腺がんの罹患数は、国立が 4 0人、女性:1万3800人)と推定さん研究センターの調査(2021年)によると、1万8600人(男性:480れています。男女比は1:3と、こちらも女性に多い病気です。また、5年相対生存率は約95%となっており、進行が遅い、おとなしいがんといえますが、一部には悪性度が高い、危険なタイプのものもあります。後で詳しく解説します。甲状腺の病気の代表である「バセドウ病」と「橋本病」の特徴をみていきましょう。甲状腺機能亢進症のなかで患者数が最も多いのが、「自己免疫疾患」の1つであるバセドウ病です。自己免疫疾患とは、本来、細菌やウイルスなどの外敵から自分の体を守るために働く抗体が、何らかの理由によって自分の体を刺激・攻撃することで起こる病気の総称で、この抗体は「自己抗体」と呼ばれます。甲状腺ホルモンは、つねに一定の量になるように分泌量がコントロールされて*副甲状腺から分泌される「副甲状腺ホルモン(PTH)」は骨の代謝を亢進させたり、ビタミンDを活性させたりする働きがある。甲状軟骨 (のどぼとけ)甲状腺左葉右葉副甲状腺* (4カ所)気管 血液中の甲状腺ホルモンの量が減ってくると、視床下部から分泌される「甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)」が増加して、下垂体での「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」の分泌を増やします。そして、増えたTSHが甲状腺を刺激することで、甲状腺ホルモンの分泌が増加します。 逆に、甲状腺ホルモンの量が過剰になると、TRH、TSHが減少し、甲状腺ホルモンの分泌を抑えます。視床下部下垂体甲状腺ホルモン甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)甲状腺刺激ホルモン(TSH)2024.04 – LABO ■図表2 甲状腺ホルモンが過剰になる病気 甲状腺中毒症(甲状腺ホルモンが過剰になる病気)には次のような種類があります。甲状腺機能亢進症▶バセドウ病本来、自分の体を守るはずの免疫の働きに異常が起こり、甲状腺を攻撃してしまう自己免疫疾患。甲状腺への刺激が続くことによって甲状腺ホルモンの分泌が止まらなくなる。▶プランマー病甲状腺にできた腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌し、バセドウ病のような症状が現れる病気。破壊性甲状腺炎▶亜急性甲状腺炎甲状腺に炎症が起こり、甲状腺の細胞が壊れて甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出る病気。症状がバセドウ病に似ているが、甲状腺の痛みや腫れ、発熱が起こるのが特徴。原因はまだ明らかになっていない。▶無痛性甲状腺炎何らかの原因により甲状腺の細胞が壊れ、ホルモンが血液中に漏れ出る病気。痛みはない。出産後に起こることが多い。バセドウ病と区別がつきにくいため、アイソトープ検査で診断する。図表1 甲状腺の基礎知識甲状腺の位置と構造甲状腺ホルモンの分泌のしくみ
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