Labo_No.543
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※参考資料:厚生労働省ホームページ、NHK新型コロナ特設サイト監修 岡おか田だ邦くに夫お NPO法人健康経営研究会 理事長。大阪ガス(株)産業医などを歴任。厚生労働省、文部科学省のメンタルヘルス関連の委員会委員も務めた。13■ LABO – 2024.04 感染者数は増減を繰り返し、 収束の見通しは? 日本ではじめて新型コロナウイルスの感染者が確認されて4年以上が経過しました。2020年4月7日に7都府県に緊急事態宣言が発出され、4月16日に対象が全国に拡大。その後、7週間ぶりの5月25日に緊急事態宣言は全面解除となりました。 その後、約4年の間に感染拡大の波は2023年秋の第9波まで数え、以後、感染者の数は落ち着きをみせていましたが、11月下旬から再び増加しはじめ、2024年に入ってから、第10波到来ともいわれました。2月に入ってからやや減少傾向となるも、依然として感染者数は増減を繰り返す状況にあります。 日本でどのくらいの人が感染したのか 厚生労働省が公表した、献血時の検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有割合実態調査によると、抗体保有率は2023年11月時点でおよそ56.4%(補正値=都道府県、性別、年齢群にて補正した値)でした。年代別にみると、2023年11月時点で16-19歳 71.5%、20-29歳 64.6%、30-39歳64.5%、40-49歳60.2%、50-59歳51.0%、60-69歳42.0%と、年代が上がるごとに抗体保有率は低くなっています(献血可能年齢より上の年齢のデータはなし)。 ワクチンや医療費の  特別措置が次々終了 これまでにわが国で新型コロナウイルスのワクチンを接種した回数は、2024年2月20日時点で4億3529万2473回です。1回でも摂取したことのある人は全体の80.6%で、65歳以上の高齢者では93.0%となっています。 新型コロナのワクチンはこれまで無料で受けることができましたが、2024年4月からは希望すれば接種できますが、65歳以上の高齢者などは7000円を、それ以外の人は全額を自己負担することが決まっています。 さらに、4月1日以降は新型コロナウイルスに関する公費支援が全面撤廃されます。新型コロナ治療薬の公費負担はなくなり、保険診療の負担割合に応じて1~3割の窓口負担が求められます。 注意すべきはウイルスの変異 新型コロナウイルス感染がなかなか収束しないことには、ウイルスの変異が大きくかかわっています。流行の初期に多くを占めていた「アルファ株」から「デルタ株」、「オミクロン株」と次々に変異を続け、「オミクロン株」はさらにBA1、BA2など小さな変異を続け、2024年2月現在で主流となっている「JN.1」も、オミクロン株の派生型です。 WHO(世界保健機関)の情報によると、「JN.1」はアメリカをはじめフランスやシンガポール、イギリス、スウェーデンなどでも検出が相次いで報告され、WHOはこのウイルスを「VOI=注目すべき変異ウイルス」に指定しました。この変異ウイルスは免疫を逃避する能力が高まっている可能性があるものの、入院や重症化のリスクが高くなっているという報告はないとしています。 見過ごせない「後遺症」 感染予防のための日常は 新型コロナウイルス感染症は、インフルエンザなど他の感染症と同じ扱いになりましたが、懸念材料は残ります。その1つは前記した変異株で、変異する株が体に及ぼす影響の大きさや重症度については、まだ推し量ることができていません。また、これまでに開発された治療薬の効果についても明らかになっていない点が多いのです。 そして、もっとも気になるのは感染後のいわゆる「後遺症」ではないでしょうか。「後遺症」についてのWHOの定義では、倦怠感などが少なくとも2カ月以上続き、ほかの病気による症状として説明がつかないものとなっています。症状に関しては、倦怠感や集中力低下、脱毛、嗅覚・味覚障害などさまざまで、詳しい原因や患者数もわかっていないというのが現状です。 明確な予防法が確立されていない新型コロナウイルス感染症。予防するには、手洗いやうがいを徹底する、なるべく人込みを避ける、マスクを着用する、栄養バランスのよい食事や良質な睡眠を心がける、適度な運動をするなど、これまで実施してきたことを引き続き行うことが何より大切です。免疫力を高めて、「感染しない、感染させない」の初心を忘れずに賢く行動することを肝に銘じたいものです。日衛協Topic2020年1月に国内ではじめて確認された新型コロナウイルスは、変異のたびに流行を繰り返し、今年1月で丸4年が経過しました。流行初期には重症度の高い感染症でしたが、徐々に重症度が低下し、2023年5月からは感染症法上の扱いも5類に移行しました。コロナ禍の4年を振り返りながら、今、そして今後のコロナへの向き合い方を考えます。「新型コロナウイルス感染症のこれまで、そしてこれから」――コロナ禍の4年間を振り返って――

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