人生100年時代を迎えている日本。国民皆保険制度を堅持するためには経済・財政との調和を図ることが不可欠です。より効率的・効果的な医療政策を実現し、国民の制度に対する納得感を高めなければならない中、令和6年度診療報酬の改定が行われました。今回の改定の概要と臨床検査への評価についてまとめます。人材確保・働き方改革などを推進し質の高い医療サービス実現が必須急務な課題「全世代型社会保障」を構築し医療と経済の発展を両立させて安心・安全の暮らしを実現令和6年度診療報酬改定の概要酬、介護報酬および障害福祉サービス等の報酬の同時改定で、重要な節目になっています。75歳以上の人口増加と生産年齢人口の減少という人口構造の変化がさらに加速する今後を見据え、令和6年度の改定の重点課題は、「現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進」です。X(デジタルトランスフォーメーション)等の社会経済の新たな流れを取り込んで、効果的・効率的で質の高い医療サービス実現が必要になってきます。推進」、「効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」を基本として、診療報酬の新たな評価や内容の見直し、具体的な方向性が示されました。(1)人材確保・働き方改革等の推進(重要課令和6年度の改定は、6年に一度の診療報これまでの改定の流れを継承しながら、D従来からの「安心・安全で質の高い医療の題)①医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取組②勤務環境の改善、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進③業務の効率化に資するICTの利活用の推進④必要な救急医療体制等確保⑤多様な働き方を踏まえた評価の拡充⑥医療人材及び医療資源の偏在への対応(2)医療機能の分化・強化・連携の推進①医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進②地域包括ケアシステムの深化・推進のための取組③リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理の連携・推進④医療機能に応じた入院医療の評価⑤外来医療の機能分化・強化等⑥新型感染症等に対応できる地域における医療提供体制の構築に向けた取組⑦かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価⑧質の高い在宅医療・訪問看護の確保(3)安心・安全で質の高い医療の推進 ①食材料費、光熱費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応②安心・安全に医療を受けられるための体制の評価③アウトカムにも着目した評価の推進④小児医療、周産期医療、救急医療等への適切な評価⑤生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的疾病管理及び重症化予防の取組推⑥口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実等、歯科医療の推進⑦薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価、薬局・薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進、病院薬剤師業務の評価⑧薬局の医薬品供給拠点としての役割の評価を推進⑨医薬品産業構造の転換も見据えたイノベーションの適切な評価や医薬品の安定供給の確保等(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上①後発医薬品やバイオ後続品の使用促進、長期収載品の保険給付の在り方の見直し等②費用対効果評価制度の活用③市場実勢価格を踏まえた適正な評価④医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進(再掲)⑤医療機能に応じた入院医療の評価(再掲)⑥外来医療の機能分化・強化等(再掲)⑦生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的疾病管理及び重症化予防の取組推進(再掲)⑧医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進⑨薬局の医薬品供給拠点としての役割の評価を推進(再掲)臨床検査(検体検査)の改定については、引き上げが「特殊染色加算(特殊染色ごとに)」、「肺がん関連遺伝子多項目同時検査」など9項目、それ以外においては、保険収載の約780項目のうち約3割の200項目が1~4%の引き下げです。厚生労働省の社会診療行為別調査(2022年6月)の検査実施件数に基づいて算出した変化率はマイナス5・(令和6年3月5日厚生労働省令和6年度診療報酬改定説明会資料等より)102024.04 – LABO ■令和6年度診療報酬改定の影響検査区分件 数16,894,833尿・糞便等検査24,529,282血液学的検査生化学的検査(Ⅰ)20,864,229生化学的検査(Ⅱ)6,881,95916,157,666免疫学的検査5,629,764微生物学的検査64,821,119合 計2022年点数279,175,8411,036,053,8991,698,585,3761,084,180,0291,521,533,9722,243,805,8647,863,334,9812024年点数279,159,808点数差異変化率-16,033-0.011,034,816,932-1,236,967-0.121,657,893,385-40,691,991-2.401,068,546,668-15,633,361-1.441,285,684,471-235,849,501-15.502,101,059,708-142,746,156-6.367,427,160,972-436,174,009-5.55尿・糞便等検査 :カルプロテクチン(糞便) : -0.005% (点数差異の約半分;8,152点)血液学的検査 :Dダイマー : -0.17% 、染色体検査 : -0.08% 肺がん関連遺伝子多項目同時測定 : +0.13% 生化学的検査(Ⅰ):血液化学検査包括(10項目以上) : -2.02%、フェリチン半定量・定量 : -0.12% 生化学的検査(Ⅱ):内分泌 : -1.29%(TSH、FT4、BNP;-0.93%) 腫瘍マーカー:-0.15%(PSA;-0.08%)、腫瘍マーカー包括4項目以上:-0.04%免疫学的検査 :SARS-CoV-2抗原定性:-12.79% SARS-CoV-2・インフルエンザウイルス同時検出定性:-2.16% 肝炎ウイルス関係:-0.21% (SARS-CoV-2 関連の2項目を除くと全体の変化率は-0.79%) 微生物学的検査 :SARS-CoV-2核酸検出、SARS-CoV-2・インフルエンザウイルス同時検出:-6.74% 細菌培養同定:+0.50%、細菌顕微鏡検査:+0.21%、薬剤感受性検査:+0.14% (SARS-CoV-2 関連の2項目を除くと全体の変化率は+0.65%)(社会医療診療行為別調査<令和4年(2022年)6月>数値より算出) 進 55%となりました(左表)。 日衛協ナウ
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