143一方、LDは筋肉にも多量に存在するため、激しい筋肉運動や筋肉注射でも上昇し、運動による数値への影響は1週間ほど続く場合もあります。また、赤血球中にも存在しているので、採血時に溶血(赤血球が壊れる)すると血清LD値は上昇します。血清LDの異常の多くは高値となります。低値の場合、基本的には問題はありませんが、きわめてまれな疾患、遺伝性LD欠損症では低値を示します。前に述べたように、血清LDは運動による数値への影響が1週間ほど続く場合があります。検査の前数日間はできるだけ運動を控えるようにしましょう。●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。日本臨床検査専門医会盛田 俊介 H H H H H H H M H H M M H M M M M M M M142024.01 – LABO ■アイソザイムの型LDが多く含まれる臓器 LD 1心臓、腎臓、赤血球 LD 2 LD 3肺、肝臓、骨格筋 LD 4肝臓、副腎、甲状腺 LD 5LDとは何ですか?LD(乳酸脱水素酵素)は、私たちの体のほとんどすべての細胞・臓器に存在している酵素で糖質をエネルギーに変える働きをしていますが、肝臓や腎臓、心臓、筋肉、赤血球などに特に多く存在しています。臨床検査では、さまざまな臓器の細胞が古くなって壊れ、新たに生まれ変わるときに、壊れた細胞から漏れ出てきたものを血清LDとして測定しています。どんなときに異常値になりますか?LDは細胞・臓器に広く分布しているため、何らかの異常で細胞や臓器が破壊されることにより血液中に漏れ出し、数値が上昇しますが、特にLDが多く存在する肝臓、心臓、肺、腎臓、血液、骨格筋などの病気で血清LDは著明に増加します。また、悪性腫瘍では、がん細胞が異常増殖することにともなってその崩壊も盛んになり、LDが多量に漏れ出すことから血清LDだけが異常高値を示すことがあります。見逃してはいけない異常値とは?LDは身体のほとんどの組織に存在するので、異常値が出た場合、どこに障害があるのかは単独では判断しづらいですが、血清LDが1000U/L(基準範囲124~222U/L)を超えているときは、生命が危ぶまれるほど重篤な細胞傷害が生じている可能性が考えられます。また、血清LDだけが高値の場合は悪性腫瘍の可能性もあります。LDが異常値のときはどうすればいいですか? 血清LDは病的でない高値の頻度も高いですが、さまざまな細胞傷害や悪性腫瘍などの重要な病態を反映します。異常値が認められたら再検査を受けましょう。血清LD高値のときには、LDアイソザイムの測定結果や他の検査所見とあわせて、その原因を推定します。アイソザイムとは、同じ働きをしますが分子構造が違う仲間の集まりです。LDには5個の型があり、どの型が多いかによってどの臓器に疾患があるかある程度見当がつきます。検査のはなし vol.14専門医が教えるLDには5個の型がある見逃せない検査10異常「LD(乳酸脱水素酵素)」2
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