Labo_538
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■LABO – 2023.11同じ若い痩せ型女性にも2つのタイプが存在する世間一般のイメージを払拭する機会にていても健康な人がいるのも事実。体形と健康リスクを科学的に解明するための基礎研究にしたい」と考え、調査ベースの研究へと進んでいきました。――先生にとって、新たな研究領域へのチャレンジとなったわけですね。正直、思ってもみなかった研究に取室伏 り組んでいるなと。スポーツに特化した研究から、職場の内部連携を機に、一般の人たちの健康増進に役立てられる研究領域にかかわることは、私自身がもう一皮むけるチャンスでもあると思いました。女性アスリートの間でも特に審美系や持久系種目の選手は、「エネルギー不足」「無月経」「骨粗鬆症」のリスクが高いといわれています。一方、若い瘦せ型の女性が痩せに至った背景については、これまで十分に検討されてきませんでした。そこで、本研究では痩せ型女性のダイエット経験の有無に着目し、出生時体重、ボディイメージ、体重に対する認識、運動・食習慣、摂食態度、eHealthリテラシー、メディアから受ける美の影響と内在化する傾向の度合い、性格特性、自尊感情など、多面的な背景検証調査を実施しました。――調査はどのような手順で進めていかれたのですか?まず、痩せ型並びに母子手帳を基に室伏 出生時体重の申告が可能な対象者をスクリーニングする目的で、18~29歳の女性に限定してWebアンケート調査を実施しました。調査研究ではクオリティの高いデータを収集することが何よりも肝要で、偏ったデータでは本末転倒になりかねません。ましてや今回は対象者が狭い範囲に限定されていることなども考慮し、調査の専門会社に依頼しました。本研究のために研究助成に応募・採択され、そこに資金を投入できたからこその調査だったのです。――アンケート結果によってどのようなことがわかりましたか?今回の調査では5905名から回答室伏 を得ることができ、そのうちの23・5%、すなわち1390名が低体重(18・5㎏/㎡未満)の条件に該当しました。5人に1人が痩せ。これは国民栄養調査等の結果とも一致しており、偏ったデータではないことが確認できました。そして、「痩せ」だった人たちを対象としていよいよ本調査へと移行し、先ほど述べた多面的な背景検証調査を実施しました。――焦点を絞って調査をされた結果、どのような知見が得られたのでしょうか?同じ痩せ型女性でも、痩せ志向のあ室伏 る人と元々ないという人たち――すなわちダイエット経験の有無の両グループには異なる背景が存在していることがわかりました。ダイエット経験のないグループの特徴としては、出生時体重がダイエット経験のあるグループよりも軽く、体重が減りやすいと回答する割合が多いことから、生まれつき痩せ体質であるという可能性が考えられる点。また、自分にとって、肥満だと感じる体重がダイエット経験のあるグループよりも約2・5㎏重い数値を申告している点。そうした特徴から体重や食事量を増やすことに対して、比較的抵抗感が小さいこともわかりました。――一方のダイエット経験のあるグループにはどのような特徴が?まず、体重が落ちにくく、ストレス室伏 や疲れを感じたときに食事量が増える傾向がみられる点。次に、肥満だと感じる体重はダイエット経験のないグループよりも約2・5㎏軽い数値を申告し、体重増加や食事量の増加に対する抵抗感が強い傾向にあった点。また、運動習慣は、小学生時代から現在まで、ダイエット経験のないグループよりも高い割合で、現在、運動習慣のある人の主な運動実施の理由としては、「美容と肥満解消のため」と回答した割合が70%と高い結果となりました。――ダイエット経験のあるグループは、メディアによる美に関する情報の内在化傾向もその経験のないグループに比べると高そうですね。室伏 はい。それによって、ボディイメージの歪みといった主観的認知への影響が生5銅メダル獲得の表彰式で2010年広州アジア大会、ハンマー投で銅メダルを獲得2010年、広州アジア大会にて(円盤投)1994年、国民体育大会で円盤投2位

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