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Q&AQ1大腸がん検診の「便潜血検査」はどの程度有効?A毎年受診することで、大腸がんによる死亡率が33%減少すると報告されています。副作用や事故のリスクがなく、簡便である点でも優れた検査法です。便潜血検査で陽性と出た人のうち、大腸がんが見つかるのは数%程度。陽性の20〜50%程度は大腸ポリープで、半数以上は異常なしや痔であるとされています。胃や十二指腸などから出血している場合にも、陽性と出ることがあります。痔だからと陽性の結果を自己判断せず、必ず精密検査を受けましょう。▼職場のがん検診、人間ドックの問題点▼偽陰性(見落とし)▼偽陽性▼過剰診断▼偶発性(事故)▼放射線の被曝▼効果が十分に証明されていない検査も  はなく、どんな検査にも限界があります。検査のデメリットも知ったうえで、受ける検査を選びましょう。検査のメニューが多いため、有効性が不確かな検査や、がんが見つかる可能性がほとんどない若い人に対して検診が行われることもある。がんが見つけにくい場所や形をしている場合には発見できないことはある(ただし、毎回検診を受けることによりがんを発見できる確率は高まる)。がん検診はがんの可能性のある人を見つけることが目的なので、要精密検査となった場合でも真にがんと診断されるのはわずか。最も確率が高い乳がんでも4.15%にすぎない。がんの中には進行がんにならずに消滅してしまったり、前立腺がんのようにそのままの状況で留まったりするものがある。このようながんにも通常のがんと同じように、さらなる検査や治療が行われることがある。大腸や胃の内視鏡検査では、大腸や胃を傷つけてしまう、穴を開けてしまうなどがまれにある。また、高齢者が大腸内視鏡検査を受けると、脳卒中、心筋梗塞、腎不全の引き金になることもある。CT検査は自治体のがん検診では勧められていないが、日本は世界一、CT検査が多い国。CT検査はX線を使って体の断面図を撮影するものなので、放射線量が低いとはいえ被曝リスクがないとはいえない。•PET検査は人間ドックでもスタンダードな検査になっているが、有効性はまだ証明されていない。1センチ以下のがんは見つけにくく、また、見つけやすい部位と見つけにくい部位が存在する(PET検査とCT検査を組み合わせることで、精度を上げている報告もある)。•近年、自宅で少量の血液や尿を採取して郵送で検査機関に送る検査が人気だが、厚生労働省は科学的な裏付けに乏しいなどさまざまな問題を指摘している。•遺伝子検査キットや尿、唾液を使って行うがんのリスク検査は心身の負担なく手軽にできるメリットはある。しかし、どれも検査結果はリスクの高低が漠然とわかるにすぎず、信頼性に不安がある。•「血液1滴でがんを見つけ出す」とうたう腫瘍マーカー測定は人間ドックの人気オプションとなっているが、腫瘍マーカーは本来、がんを発見する指標ではない。すでにがんになっている患者に対して行い、マーカーの数値を観察してがんの病勢を把握するもの。前立腺がん以外のがんの早期発見には向かない検査。17■ LABO – 2023.11Q2対策型がん検診になぜ「前立腺がん」検査がないの?A前立腺がんの早期発見ができる検査が「PSA検査」です(PSAは前立腺がんの腫瘍マーカー)。前立腺がんは非常に進行が遅いがんで、早期に発見してもそのまま様子を見る(監視療法)ケースが少なくありません。厚生労働省の研究班がまとめた指針によると「個人の判断で受診することは妨げないが、市区町村が行うがん検診への導入は勧められない」としていますが、8割近くの市区町村がPSA検査を導入しています。一方、日本泌尿器科学会は最新のエビデンスにもとづき、PSA検査による前立腺がん検診を推進する声明文を出しています。声明文によれば、検査を受けて前立腺がんが見つかったとしても、過剰治療などの不利益低減策として、精度の高い生検法や監視療法など、確実に有効な対策を推進するとしています。Q4胃がん検診では造影検査(X線)と内視鏡検査(胃カメラ)のどちらを受けるのがいい?A死亡率減少効果としては、X線検査が40〜48%、内視鏡検査が30〜80%とされており、有効性は内視鏡に軍配があがりますが、胃がんには「スキルス胃がん」という特殊なタイプのがんがあり、X線検査のほうが発見しやすいとされています。内視鏡検査とX線検査を交互に受けてみるのも、早期発見につながる検査の受け方ではないでしょうか。がん検診の疑問に答えます!Q3対策型の「乳がん検診」に「超音波検査」がないのはなぜ?A乳がん検診で行う超音波検査の死亡率減少効果が、まだ明らかになっていないからです。現在、40代でマンモグラフィと超音波検査を併用する場合の研究が進められています。ただし、乳房の中の乳腺が多い「高濃度乳房」の場合は要注意です。マンモグラフィで撮影すると乳房全体が白っぽく写り、乳がんが見つけにくいのです。一度、マンモグラフィを受けて高濃度乳房を指摘された場合は、超音波検査のオプションをつけるといいでしょう。

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