Labo_536
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脳膣4膀胱の排尿筋は弛緩し、逆に尿道括約筋は収縮して尿がもれるのを防ぎます。そして、排尿できる状況になると、脳が「尿を出してよい」という信号を膀胱と尿道に伝えます。すると、排尿筋が収縮するとともに尿道括約筋が弛緩し、腹圧をかけることで排尿に至ります。本来、膀胱は尿を400mL程度までためることができます。また、夜間は抗利尿ホルモンが分泌され、その作用で尿量が減るという睡眠を妨げないようなしくみが働いています。このような排尿のしくみがあるにもかかわらず、なぜ頻尿・尿もれが起きてしまうのでしょうか。まずは頻尿の原因をみていきましょう。膀胱に尿が十分にたまっていないのに、急にがまんできないほどの尿意が起こる(尿意切迫感)病気で、トイレに何回も行くようになります。日本の40歳以上の男女の約12%に過活動膀胱の症状があるとされています(『過活動膀胱診療ガイドライン(第3版)』より)。過活動膀胱の原因は、神経の障害によって起こる「神経因性」と、神経の障害がなく起こる「非神経因性」の大きく2つに分けられ、8割が非神経因性といわれています。神経因性の場合は、脳卒中(脳血管障害)、パーキンソン病などの脳障害、脊髄損傷などが原因です。一方、非神経因性の多くは原因が明らかではありませんが、加齢とともに、男性では「前立腺肥大症」、女性の場合は女性ホルモンの減少も影響していると考えられています。女性ホルモンには尿道やその周辺の筋肉に弾力を与える働きがあり、減少すると膀胱や尿道を支える「骨盤底筋群」がゆるみやすくなります(図表2)。残尿とは排尿後も膀胱内に尿が残る状態です。残尿量の増加を引き起こすのは、前立腺肥大症や糖尿病、腰部椎間板ヘルニアなどで膀胱を収縮させる神経が障害されたことによる排尿障害などです。前立腺は膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲んでいます。大きさは直径4cm、長さ3cm程度で、栗の実のような形をしています。この前立腺が大きくなる病気が「前立腺肥大症」です。前立腺が肥大すると尿道が圧迫されて狭くなるため、頻尿や残尿感などの症状が起こります(5ページ、図表3)。水分のとりすぎをはじめ、高血圧や心不全、腎臓病、糖尿病などの病気があると多尿を招きやすくなります。また、利尿薬や高血圧の治療に使われるカルシウム拮抗薬などの薬剤が多尿を引き起こすこともあります。頻尿の主な原因は過活動膀胱や前立腺肥大症▼過活動膀胱▼残尿量の増加▼多尿過活動膀胱の原因となる「骨盤底筋群」は、膀胱や尿道を支える重要な筋肉です。なお、骨盤底筋群は男性にもあります。〈女性の場合〉女性の骨盤底筋群には尿道だけでなく膣も貫通しているため、妊娠・出産で傷みやすくなるのです。子宮膀胱2023.09 – LABO ■恥骨尿道肛門脊椎直腸尿をがまんする弛緩収縮排尿筋膀胱内尿道括約筋外尿道括約筋(骨盤底筋群の一部)尿道尿を出す収縮弛緩骨盤底筋群図表2 骨盤底筋群とは?図表1 排尿のしくみ

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