Labo_535
12/16

ID I   ID     ne第5類になり、1つの節目での講演となりました。「5類になって、コロナが終わったというわけではないのですが、1つの区切りではあると思います。少し感染症との関わりを振り返ってみます。人間は常に感染症と闘ってきた歴史があります。東大寺の大仏がつくられたときの様子が描かれた絵画があります。この時代に流行していたのは天然痘なのですが、天然痘の流行が収まるようにという願いも込めて、東大寺が建立されたといわれています。ストの大流行があり、人口の3分の1がペストで亡くなったといわれています。このとき、ペストは飛沫感染するため、世界で最初に個人防護具をつけて感染対策をしたようです。そしてこのとき生まれた考え方がもう一つ。それは『検疫と隔離』です。当時、病原体が何かわかっていませんでしたが、感染した人の症状は時間が経ってから出るということがわかってきて、どこか別の場所に40日間隔離をします。そこで、発症した人、発症しなかった人を区分けし、潜伏期という意識が出てきました。ちなみに、検疫はquarantiア語で40日間を意味します。 このように、感染症を経験する中で、感染症の正体にだんだん近づいていくことになります」海外を見てみますと、中世ヨーロッパではペですが、これはイタリこのような感染症の歴史の中で、感染症に対抗する手段として、ワクチンや抗菌薬を開発することになります。「1700年代には、牛から感染する牛痘にかかった人は天然痘にかからないということに気づき、牛痘のワクチンをつくって接種したところ、感染しなくなりました。これが最初につくられたワクチンです。その後、1930年代に入ると、のちにノーベル賞を受賞されるフレミング博士が、ペニシリンという抗生物質を発見し、1940年代になってからは、一般的に使われるようになっていきました。このときからすでにペニシリンの乱用が始まり、耐性菌という、ペニシリンが効かない菌が出現し、現在は、耐性菌の問題も生じています。このように、感染症に対抗する手段を一つひとつ開発してきているのですが、特にこのる多くの感染症が出現するようになっています。最初に新興・再興感染症として意識されるようになったのがSARSです。2003年から中国で広がり、あっという間に世界中で感染者・死亡者が報告され、世界を驚かせました。ペストなどは数百年かけて広がっていったのですが、これまでの感染症の広がりと、SARSの広がりを比べてみると、飛行機などの交通手段が加わって、拡散するスピード、距離、量が比較にならなくなっています。MARS、エボラ出血熱、ジカウイルス感染症など、新興・再興感染症が出現を繰り返している中で、今回のCOVたととらえるのがいいと思います」-19が出現し去る2023年5月17日に開催された創立50周年記念行事。「記念講演」に講師としてお迎えしたのは、大阪大学大学院医学系研究科感染制御学教授をつとめる忽那賢志先生。コロナ禍の中、現役の医師として、また研究者として、急拡大する新型コロナウイルス感染症に向き合い、奮闘し、テレビやS  NSを通しても、感染症の専門家として解説に努められました。感染症の歴史をたどりながら、COVDらについて語っていただきました。大阪大学病院の臨床医として、感染制御学の教授として活躍されている忽那賢志先生。講演日の1週間前には、COV-19のこれまでとこれか-19が第2類から忽くつ那な賢さと志し人類の歴史の中での感染症との闘い122023.08 – LABO ■20年の間に、新興・再興感染症といわれてい1978年12月7日、福岡県北九州市出身。2004年、山口大学医学部卒業。同年、関門医療センター初期研修医に。2010年、市立奈良病院感染症科医長、2018年、国立国際医療研究センター国際感染症センター・国際感染症対策室医長、2021年、大阪大学大学院医学系研究科感染制御学教授、大阪大学医学部附属病院感染制御部部長。2022年、大阪大学医学部附属病院感染症内科診療科長に就任。Profile過新去興20・再年で興感染症が急に出現先生講演ファイル「COVID-19 「COVID-19 「COVID-19 これまでとこれから」 これまでとこれから」 これまでとこれから」

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る