1438●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。日本臨床検査専門医信岡 祐彦図 止血の仕組みこのような止血の仕組みに何らかの異常が生じると、出血しやすい、あるいは出血するとなかなか止まりにくいという症状が出現します。これを出血傾向と呼んでいます。凝固因子の異常で出血傾向を生じる代表的な疾患に血友病があります。血友病には血友病A、血友病Bの2型があり、血友病Aは第VIII因子、血友病Bは第IX因子の遺伝子異常が原因です。いずれもPTには異常はありませんが、APTTの延長がみられます。2023.07 – LABO ■血管壁障害血小板粘着血小板凝集血液凝固因子の活性化フィブリン生成プロトロンビン時間(PT) 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)血小板血栓(1次止血栓)フィブリン血栓(2次止血栓)検査のはなし vol.14専門医が教える止血の仕組みは?血管が破綻し出血が起こると、まず破綻部位の血管壁に血液中の血小板が集まってきて、粘着・凝集し血栓を作ります。これを血小板血栓または1次止血栓といいます。この血小板血栓は脆く、これだけでは止血は不十分なので、次いで血液凝固因子と呼ばれる物質が活性化してフィブリンを形成し、これが血小板血栓にからまって強固な2次止血栓(フィブリン血栓)を作ります。これで止血が完了します(図)。凝固検査(PT、APTT)とは何?出血傾向が出現した場合には、主に血小板と血液凝固因子の2つを検査します。このうち血液凝固因子を調べる検査に、プロトロンビン時間(PT:Prothrombin Time)と活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT:Activated Partial Thromboplastin Time)の2つがあります。凝固因子の欠乏や異常があると、血液凝固過程が障害され、PT、APTTが延長します。血液凝固因子は全部で12あり、ローマ数字でIからXIIIまでの番号がつけられています(VIは欠番)。PTは、第VII、X、V、II、I因子のいずれかが欠乏したり機能に障害があると延長し、一方APTTは、第XII、XI、IX、VIII、X、V、II、I因子のいずれかの欠乏や機能の異常で延長します。2つの検査は、X、V、II、I因子については共通していますので、例えばPTが延長しAPTTが基準範囲内の場合は、第VII因子の異常が考えられます。逆にPTが基準範囲内でAPTTが延長している場合には、第XII、XI、IX、VIII因子のいずれかの異常が考えられます。PT、APTTの基準範囲は?基準範囲は、おおよそPTは10~13秒、APTTは25~40秒です。通常PTは秒数ではなく、健常者のPTに対する比率(PT-INR:国際標準比)で表示します。PT-INR=患者検体PT(秒)/健常検体PT(秒)であり、基準値は約0.85~1.15(ほぼ1.0)です。異常「凝固検査(PT、APTT)」2見逃せない検査
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