時間外労働時間の上限が来春から年960時間未満に直前実態調査にみる医師の働き方改革の課題医師の業務をほかの医療職にタスクシフトとタスクシェアで、いよいよ1年を切りました。この制度で、時間外労働の上限は原則として年960時間未満、月100時間未満。年間で960時間は一般の労働者と同程度で、月平均に換算すると80時間になります。ただし、医療機関の役割や業務の種類によっては対応が難しい場合が「勤務医の時間外・休日労働時間の上限規制」の来年4月施行開始まあるとして、原則として年960時間未満を「A水準」とし、特例として年1860時間未満の「B水準」「C水準」が設けられています。「B水準」は、地域医療や救急医療を担う医師・医療機関が該当します。「C水準」は、初期研修医や専門医資格を目指す専攻医などを対象としています。「B水準」「C水準」は、都道府県に申請して、指定を受ける必要があります。「B水準」は2036年3月に終了し、「A水準」の年960時間未満となることが目標とされていますが、「C水準」は上限を縮減しつつ存続する予定です。この制度のスタートを前に、文部科学省は全国医学部長病院長会議に委託し、2022年7~12月、「病院勤務医の時間外労働の規制に関する調査」を実施。全国81の大学病院から回答を得て、その結果を今年4月に公表しています。それによると、調査した大学病院の計約4うち、2022年11月時点で特例申請を予定するのは、約1万5000人と3割近くに達しています。これは、過労死ラインとされる「月80時間」を超える水準で、すべての大学病院が特例の適用を求める申請を予定しているということです。現場の医師不足の実態の一端が浮き彫りとなったかたちで、調査万4000人の医師のを行った全国医学部長病院長会議は、労働時間短縮のため、待遇改善や人材確保、業務移管などが必要だと指摘しています。さらに、時間外労働の上限規制で予想される影響を複数回答で質問したところ、研究時間の確保ができなくなり「研究成果が減少する」が手医師などを養成する「臨床教育の質の低下が生じる」が88・9パーセントでした。大学病院は教育、研究の役割も担っています。医療の発展につながる研究や人材育成の継続も重要な機能です。提供される医療の量の確保だけでなく、質の問題も課題といえます。医師の働き方改革を推進するための具体策のひとつとして「タスクシフト」と「タスクシェア」があります。「タスクシフト(業務の移管)」とは、従来、ある職種が担っていた業務を他職種に移管すること。「タスクシェア(業務の共同化)」とは、従来、ある職種が担っていた業務を他職種と共同化することです。1か月の宿直の回数0% 20% 40% 60% 80% 100%宿直1回当たりの拘束時間数0% 20% 40% 60% 80% 100%図表2 医師の働き方における課題月の最長連続勤務時間0% 20% 40% 60% 80% 100%9.8 43.7 24.8 10.0 9.1 2.623.9 25.7 29.0 19.1 2.37.2 7.8 79.8 5.2□8時間以下 □8時間超〜13時間以下 □13時間超〜16時間以下 □16時間超〜24時間以下 □24時間超〜36時間以下 □36時間超□1回 □2回 □3〜4回 □5〜8回 □9回以上 □12時間以下 □12時間超〜14時間以下 □14時間超〜16時間以下 □16時間超 平均15.4時間(最小値4時間/最大値72時間)平均3.2回(最小値1回/最大値28回)平均15.2時間(最小値8時間/最大値42時間)90・1パーセントで最多。ついで若13■ LABO – 2023.07Medical Trendメディカル・トレンド
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