Labo_534
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医師の長時間労働の現状最長連続勤務は24時間超えも 長時間勤務を生む医師の職務上の特性    慢性的な医師不足、地域による医療格差などを背景に、医師の長時間労働が常態化しています。医師の働き方改革に関する検討会の実態調査資料によると、雇用者(年間就業日数200日以上・正規職員)について、1週間の労働時間をみると、労働基準法規定の週40時間を大幅にうわまわる60時間を超える人が、雇用者全体では14パーセント。これを職種別にみると、医師は41・8パーセントで最も高い割合となっています。また、1か月の最長連続勤務時間の平均は15・4時間で、24時間を超える医師が全体の1割強みられます。宿直は月平均3・2回で、1回当たりの拘束時間は平均で15・2時間(うち、実労働時間は平均5・3時間)となっています(図2)。長時間労働が起こりやすい大きな要因のひとつに、「応召義務」「当直」「専門性の研鑽」の、医師の職務上の特性があります。る医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」という医師法の規定です。 「当直」は、通常の時間外、おもに夜間や休日の勤務で、夜間の救急外来や病棟で状態悪化の対応にあたります。通常の日勤業務を行い、そのまま当直を行う場合や、当直の翌日も日勤業務を行うケースが多く、体力的な負担が大きいといえます。 「自己研鑽」は、労働規制上の取り扱いが難しい問題です。医師は労働者であると同時に高度専門職であり、研究開発や教育に従事するなど、「指揮命令系統に従って労働に従事する」という労働者の前提に該当しにくい業務が含まれ、その境目も曖昧です。「この業務は研究で、この業務は臨床、これは教育」ときれいに切り分けることが困難です。また、患者に対する責任もあり、相当量の自己研鑽がなければ、業務を適切に遂行するのが難しい側面もあります。これらの医師ならではの職務特性を、医師の働き方改革においていかにバランスをとるかが大きな論点となっています。15〜19時間20〜2122〜2930〜3435〜4243〜4546〜4849〜5960〜6465〜74(1週間の労働時間)全職業総数医師(歯科医師、獣医師を除く)看護師(准看護師を含む)総務省 平成24年就業構造基本調査 60時間以上75時間以上少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少や、働くスタイルの多様化などの課題・変化に対応すべく各方面で進められている「働き方改革」。2018年6月の通常国会で「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が成立。2019年4月から、「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」などに関する8つの労働法の改正・施行が順次実施されてきました。 「医師の働き方改革」は、生命に関わる職務上、一般から4~5年遅れ、2024年4月から、目玉ともいえる「勤務医の時間外・休日労働時間の上限規制」の適用が開始され、時間外労働の上限は年間960時間と一般の労働者と同程度になる予定です。しかし、文部科学省が公表した直前の実態調査では、今年4月の段階で、大学病院の医師の3割が上限時間延長の特例申請を予定していることが判明。また、9割の大学病院が「研究や若手育成に影響」との懸念を示しています。医師の働き方改革の進展と、その影響に注目します。 「応召義務」とは、「診療に従事す図表1 1週間の労働時間の分布454035302520151050(人数構成比、%)15時間未満2023.07 – LABO ■12Medical Trendメディカル・トレンド医師の働き方改革とタスクシフト

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