Labo_529
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  視診  ▼BNP(pg/mL)※カッコ内はNT-proBNPの値  聴診  (900以上)(55~125未満) (125~400未満)*6▼問診▼視診と聴診▼心電図検査▼心臓超音波検査(心エコー法)▼胸部X線検査▼血液検査(BNP)のため、息切れやむくみなどの症状がある場合は、早めに循環器科の専門医を受診することが大切です。心不全は、問診をはじめとして以下のような検査によって診断します。息切れや動悸、夜間頻尿、むくみ、食欲不振、倦怠感などの症状があるかどうかを確認します。また、喫煙や飲酒の習慣、持病、家族に心臓病や突然死した人がいるかなどを聞きます。視診では、「首の前側にある血管(頸静脈)の膨らみ」や「むくみ」などをチェックします。聴診では、心臓に異常な音(心雑音)が聴こえたら、心不全や弁膜症、先天的な心臓の構造異常を疑います。呼吸音の異常があれば、肺うっ血(心不全)を疑います(図表3)。心電図の波形から心肥大や心筋梗塞、不整脈などの病気の有無がわかります。心不全の診療では最も重要な検査です。超音波を胸の外から当てて、心臓の動きや形状、壁の厚さ、弁の状態、ポンプ機能、血流の様子などを調べることができ、原因疾患の診断や重症度の評価を行うことができます。心臓が拡大していないか、肺に水がたまっていないか、肺血管にうっ血がないかなどを調べます。心拡大が認められた場合は、心不全が疑われます。心不全の診断に用いられる血液検査の項目は多岐にわたりますが、最も有力な手がかりとなるのがBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)です。BNPは「尿を増やす」「血管を広げる」などの作用があるホルモンで、心臓に過度な負担がかかると上昇します。BNPの代わりに「NT ‒proBNP(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)」を測定する場合もあります。BNPとNT ‒proBNPは、スクリーニングから診断、予後の予測まで、幅広く用いられています(図表4)。これらの検査結果を総合的に判断することによって、診断が確定されます。心不全の原因を明らかにするために、心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査を含む)、画像検査(CT、MRI、心筋シンチグラフィーなど)、心肺運動負荷試験などの検査を行うことがあります。心不全の治療は、次のステージに移行しないための予防でもあります。近年では「0次予防」として、肥満予防・解消、減塩、禁煙などのよい生活習慣を身につけることが重視されています。心不全の治療法や予防については、次ページの「Q&A」を参照してください。2023.02 – LABO ■18.4未満(55未満) 18.4~40未満40~100未満100~200未満(400~900未満)治療対象となる心不全の可能性がある200以上心臓に異常な負荷がかかると上昇するBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の値が、心不全の診断に役立ちます。判定基準は、日本心不全学会が以下のように定めています。心不全の可能性は極めて低い心不全の可能性は低い軽度の心不全の可能性がある治療対象となる心不全の可能性が高い 首の血管の膨らみ(頸静脈怒張)は右心不全の代表的な症状です。全身から心臓に戻る血液が心臓に入れないために、静脈に溜まってしまうことで起こります。首の血管の膨らみや脚のむくみは自分でも調べることができますので、チェックを習慣にしましょう。 聴診器を通して聴こえる心臓の音は、Ⅰ音からⅣ音までの4種類に分類されています。 Ⅰ音は心臓の収縮が始まるタイミングで弁が閉じる音、Ⅱ音は心臓の拡張が始まるタイミングで弁が閉じる音なので問題はありませんが、Ⅲ音とⅣ音は過剰心音といい、とくにⅢ音は心不全の診断に重要です。 Ⅲ音は心室が拡張する初期に血液が充満することで起こる音で、馬の駆け足の音のように聴こえることから「ギャロップ」とも呼ばれます。 また、心不全の場合、肺の聴診で水泡音が聴こえることがあります。頸静脈首の前側にある血管の膨らみ図表4 BNPによる判定図表3 視診と聴診の主なポイント

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